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《ジェノヴァの天気とタウテンブルクの空気》

2017/07/21 02:02
瀬谷こけし

タウテンブルクの野の草 2016年8月17日
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 1882年1月19日の手紙の中でニーチェは先の月々(つまり1881年11月12月あたり)のジェノヴァの天気を三つの言葉で称賛している<frisch, rein, mild>(新鮮で、純粋で、穏やか)の三語である。この三語で天気ないしは空気のよさを言い表すやり方は1882年8月24日の[KSB, 6, Nr. 287]手紙でタウテンブルクの空気を三語で言い表したやり方と似ているが、タウテンブルクについてニーチェはこう言っていた:<klar, mild, kräftig>。訳せば「透明で、穏やかで、力強い」というところだろうか。もちろん主語となっているのは「天気(Wetter)」と「空気(Luft)」で、言葉こそ違うが、言い当てようとしている対象は同じと言ってよいだろう。その両方の原文を紹介しておきたい。ジェノヴァの天気についての表現はバーゼルのオーヴァーベックに宛てた手紙の中のものだ。他方、タウテンブルクの空気についての表現は、ルー・フォン・ザロメ宛のもので、その時まで約三週間一緒にタウテンブルクにいたルーに、渡したか渡そうとしたものと考えられる。

A:
> Das Wetter der letzten Monate war der Art, daß ich nichits Schöneres und Wohlthätigeres aus meinem ganzen Leben dagegen zu setzen hätte --- frisch, rein, mild: wie viele Stunden habe ich am Meere gelegen! Wie viele Male sah ich die Sonne untergehen! [KSB, 6, Nr. 188]より
(先の月々の天気は、いわばわたしの全生涯を探してみてこれ以上に素晴らしく、元気を与えてくれるようなものがあったかと思わせるようなものでした。新鮮で、純粋で、そして温和でした。何時間もわたしは海岸で横になっていたものです! そしてわたしは何度太陽の沈むところを目にしたことでしょう! [拙訳])

B:
> Wie geht es? --- Es gab nie einen schöneren Tag in Tautenburug als heute. Die Luft klar, mild, kräftig: so wie wir Alle sein sollten. [KSB, 6, Nr. 287]より
(ご機嫌はいかがでしょうか? タウテンブルクでは今日以上に晴れやかな日は一日もありませんでした。空気が透明で、穏やかで、そして力強くありました。わたしたち皆もそうありたいものです。 [拙訳])

 このBの手紙でニーチェはルーの彼に対する「英雄主義(Heroismus)」という重要な批判に応答しているのだがその検討はまた別の機会にしたい。Aの手紙ではニーチェはオーヴァーベックにワグナーから遠ざかる気持ちへの理解を求めていて、その結びの部分でこのジェノヴァの冬の日々への称賛を語っているのである。
 穏やかで力強くそして濁りなく透明なタウテンブルクの空気と、穏やかで新鮮で純粋なジェノヴァの空気(天気)。穏やかさは共通しているが、透明で力強いタウテンブルクの空気と、純粋で新鮮なジェノヴァの空気と、どちらがより深い力をニーチェに与えるのだろうか。ジェノヴァの空気は彼に重たい疲労からの回復を与え、タウテンブルクの空気は新しい道を新たに前進して切り開いてゆく力を与えるように思うのだが、どうだろうか?


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