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みんなの「ホリガー」ブログ


《シューマン革命》

2017/07/19 00:44
瀬谷こけし

ホリガーのシューマンのオーボエ曲は、このブレンデルのピアノ伴奏のもの(1980年)とアントン・ケルニャックピアノ伴奏の《灰の音楽》(2014年)のものとの二つある。私は後者の方がはるかに良いと思っている。何回か聴くとわかるのだが、ブレンデルは曲を「陽」にむかうものとしてしか構成できない(まるでベートーヴェンのように)。だが、晩年のシューマンの音楽の抜きんでた特徴は陰と陽のデリケートな交代の繰り返しとしてしか世界は存在しないという実感を、その陰陽交代のきわめてデリケートな場に身を置いて描き出すことだ。この新しいシューマンの発見は、アンデルシェフスキ(ピアノ、2010年)、イッサーリス(チェロ、1996年)、そしてこのホリガー(オーボエ、2014年)によるものだ。
 このシューマン革命は極めて深いもので、わたしはそのためにグールド(グレン)の演奏を聴く気がしなくなってしまったのだ。
 上記の三名の音楽家の中で、最も感覚の深み(深淵)を感じさせてくれるのはアンデルシェフスキだが、最も安定して鋭く的確なのはホリガーだろう。イッサーリスについてはもっと聴きこんでからものを言いたい。






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《ロベルト・シューマンの風景》

2017/06/20 23:00
瀬谷こけし


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 シューマンの風景が最近急に変わりつつあるように思う。演奏で言えば、アンデルシェフスキの《早朝の歌》op.133、イッサーリスの《チェロ協奏曲》op.129、ホリガー解釈の《早朝の歌》、《カノン形式による6つの小品》op.56、《3つのロマンス》op.94、ケルニャック&ロイツィンガー《ヴァイオリンソナタ第1番》op.105など。他にも何曲か上げられるだろう。シューマンの最晩年の(と言っても40代の)曲が理解され、弾かれるようになってきたのだ。---これは驚くべきことだ。それによって、私的に述べさせていただくなら、バッハを聴いて喜びと満足を覚える世界観が崩れてしまうようなことなのだ。---ほとんど鬱病の底とも言うべきメンタリティーが確実に理解され、広がり、そして絶望的な非常に苦しい葛藤の細部にまで光が当たるようになってきたのだ。シューマンの偉大さ…。
 それとともにシューマンが、ヘルダーリンと非常に近いところで発見されてきたのだ。
 ホリガーは、ロベルト・シューマンが1853年11月初旬(エンデニヒの精神病院に入院する4ケ月前)に書いた「チェロのためのロマンス」をクララが1893年にブラームスの助言を受けて焼却してしまったことを重視する。---なんという犯罪! 

 しかし、何にせよ、先述の演奏者たちによって、最晩年のロベルト・シューマンの音楽が理解され、聴きうるようになったことを、わたしは喜びたい。



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《ヘルダーリンとシューマン》

2017/06/11 23:01
瀬谷こけし


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 ロベルト・シューマンの曲と同名の《早朝の歌》という曲の第一曲で、ハインツ・ホリガーはシューマンの《早朝の歌》(op.133)の第一曲にヘルダーリンの最晩年(1843年)の「春」の詩を重ねて歌わせ、ひとつの驚くべき音楽世界を作っている。シューマンのその曲はあたかも日の出の時の荘厳さを音楽にしたような曲だが、しかしその日の出のように見えるときはわずかに4小節しか続かず、それは明るい日中につづくことなく、すぐにもとの暗闇に戻ってゆくような趣きの曲なのだ。

 ホリガーの解釈では、その力強い荘厳な日の出の4小節は、ちょうど「Aus Höhen glänzt der Tag」の詩句と重なり、この重なりによって、その「高みから」(Aus Höhen)という異次元の、異世界から与えられる一瞬の特異性を強調し、異界からの輝きのないその後のその余の時間の暗さ、つらさを描いている音楽として、シューマンのこの曲の一貫した解釈を提供している。

 シューマンが晩年ヘルダーリンに惹かれていたことは知られているが、この最晩年の「春」の詩を、《早朝の歌》の解釈に導入したホリガーの鋭さにはまことに驚嘆させられる。
 ここに確かにヘルダーリンとシューマンを結びつけるひとつの碑が築かれている。


 以下、「春」詩の原典とその手塚富雄訳、そして拙訳を上げておく。私にとってはいまだ二か所、文法的な整合性が確認できていない箇所があるので、拙訳については試訳と理解しておいていただきたい。誤りなどご教示いただければ幸いです。


Der Frühling

Die Sonne kehrt zu neuen Freuden wieder,
Der Tag erscheint mit Strahlen, wie die Blüte,
Die Zierde der Natur erscheint sich dem Gemüte,
Als wie entstanden sind Gesang und Lieder.

Die neue Welt ist aus der Tale Grunde,
Und heiter ist des Frühlings Morgenstunde,
Aus Höhen glänzt der Tag, des Abends Leben
Ist der Betrachtung auch des innern Sinns gegeben.

Mit Untertänigkeit
d. 20 Jan. 1758. Scardanelli.

http://www.textlog.de/17887.html




(手塚富雄訳)

太陽は新しい喜びへ立ち帰り
日々は花のように かがやいて出現する、
自然のよそおいは心をたのしませ
あたかも歌声が起こったようだ。

新しい世界は谷々の深みから生まれ出、
春の朝は時ごとに晴れやかだ、
高みからは真昼はかがやく、夕べの生は
内なる思いのためにも与えられている。

                 敬白
1758年1月20日       スカルダネリ
(1843年に成立)



(拙訳・試訳)

太陽が再び戻ってきてうれしい、
日々には陽射しがともない、花咲くように見える、
自然の装(よそお)いは、ひとの心には、あたかも
歌や声が生まれて来たかのようにみえる。

新しい世界は谷々の底から生まれ、
春の朝の刻々はとりわけ晴れやかだ、
昼の日は高みから輝き、夕べの生にも
考察によって内的な意味が与えられる。




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