わたしが夜の戸外が好きなのは

瀬谷こけし
 わたしは親に叩かれたということがない。叱られたことがないということではないが、撲られたり叩かれたりということがないのだ。また、そんな立派な子だったはずもないし、言葉で言われただけでわかって従うというわけでもなかっただろう。
 今日、ふと思い出したのは、よく外に出されたということだ。
 外といっても玄関から外に出されたのではなく、奥の部屋から、雨戸を開けて庭に出されたのだ。庭に出されて、泣きつづけたり、雨戸を叩きつづけたりしたこともあったような気がする。そうしてある時間がたって、「謝るか」とか、「悪いと認めるか」とか糺されて、「自分が悪かった」とか「ごめんなさい」とか言わされて、家の中に入れてくれる。そんなことが何回かあった。小学生の頃のことだ。
 ふと思ったことなのだが、わたしが夜の戸外が好きなのは、その時のことがあるからではないか、ということだ。中学のころには夜中に星を見るのが好きだった。中学一年の誕生日には望遠鏡を買ってもらった。それが一番大きな誕生日プレゼントだった。『天文年鑑』とか『理科年表』とか『全天星図』とかを買って、惑星を見たり、星雲を探したりしていた。赤道儀を作ったり、鏡を磨いて反射望遠鏡を作ったりもした。大学に入ってからも、夜の道を歩くのが好きだった。大きな安らぎだった。
 父は、知る人があればみな認めてくれると思うが、きわめて厳しい人だった。だが、わたしは叱られて、外に出されて、そして謝っても、心底から納得したことは一度もなかった。むしろわたしは、夜の戸外でわたしに囁きかけてくれるものたちに、慰めを与えられ、安らぎを得るようになったのではないだろうか。夜の木々や空気は、わたしにはなぜかとてもやさしいものになった。それは、深く、深いところで、わたしが自分を信じることの支えになってくれているように思う。

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