ヘルダーリンの「パンと葡萄酒」最終行 (承前)

瀬谷こけし
ヘルダーリンの詩「パンと葡萄酒」の最終行はこうである:

Selbst der neidische, selbst Cerberus trinket und schläft.
(Brot und Wein)

ここのところ、手塚富雄氏の訳はこうである:

あの妬み深いもの、地獄の番犬ツェルベルスさえも、飲み、そして眠っている。


この訳に何の疑問があるわけでもない。問題はなぜヘルダーリンがここで妬み深い地獄の番犬ツェルベルスを登場させたのかである。
趣旨は、酒神の恩恵が、イエスを通して、ツェルベルスにまで及んでいるということである。
ツェルベルスも眠れるのである。
そして眠るのである。

そうすると「地獄」への行き来が、容易に行えるようになるのだろうか?
ということは、「地獄」が必要なくなるのだろうか。
あるいは「地獄」がなくなるのだろうか。
「地獄」といってもギリシア風の「冥界」のことだということになるのだろうが。

ツェルベルスも酒を飲む。
そして嫉みを忘れ、眠る。

ヘルダーリンは何を言いたかったのか?


===================2017.3.19 注==========
ドイツ語テキストを、Deutscher Klassiker Verlag版に従って、ミスタイプを一字修正。一字追加修正:trikt→tinket。



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