長岡千尋歌集『静歌』

瀬谷こけし
 長岡千尋さんの歌集『静歌』(2012年7月20日、北羊館)から、短い感想をつけて何首か紹介します。




01 山霧がけだもののごとく襲ひきてわが座(ゐ)る闇のまはり濡らすも
   *山霧に襲われるというさま。そういえばヘルダーリンの「自然へ」の一節と似ている。

02 山の端に海獣葡萄鏡のごとき月出でてヘルダーリンも独りなるべし
   *「ヘルダーリンも独り」の意味がよく分からない。私にはいつもズセッテといたと見えるが…。

03 仮死状態の大根を置く円卓の世界はなべていつはりとせよ
   *「大根」の「仮死状態」という捉え方がおもしろい。乾いた大根? 腐った大根?

04 動かざるくろがねの貨車の真下よりひかり射す牛の姿見えをり
   *貨車の下を覗くという趣向(あるいは単に「見える」か?)、そして見えたもの!

05 遠雷にしびるるばかりススキ震ひ 渚の細波(さざ)の夜目(よめ)に顕(た)つなり
   *音波にしびれるのか、電磁波にしびれるのか。宮沢賢治の「高原」の詩を連想する(海だべがど)。

06 即興にて詠む歌おほく神ながらのりとのごとく消えてゆくなり
   *言葉は消えてゆくもの、歌は繰り返されるもの、を。

07 罪無くて配所の月を見むとせばこの多武峰に住たまへきみ
   *ここも配所のひとつと。

08 坂の上にコンビニのある偶然やその灯が周囲の闇を照らすも
   *闇の中の一軒。

09 むかしをのこは謀反をしたり さはやかにいのちをはると父のいひしか
   *「をのこ」は「をとこ」ではなく、単に男性のこと。

10 その丘に注射針あまた埋められて春となればかがやかにスミレ咲かすも
   *これは恐怖の世界。

11 多武峰(たふのみね)澄みゆく月にあくがれてをはりはげしく散る桜かな
   *わたしは激しい春風に吹かれて散る桜が印象深いが…。

12 八重桜 逆立ちの子らみな倒れ校庭ほのかなる風に満ちたり
   *逆立ちをしていた子供たちに、八重桜はどう見えていたのか?記憶に残る校庭風景。

13 漆の木その末(うれ)そよぎ風通る道かありけり夜目(よめ)にみしかな
   *風の通り道、そういうものが見えれば、感覚も探究心も生きている。


 以上印象の強い十三首をえらび、勝手に短評を書いた。失礼の段お赦しいただきたい。



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