『この人を見よ』の中の《生への讃歌》について

瀬谷こけし
 ニーチェの『この人を見よ』の中の《生への讃歌》についての記述を紹介しておく。はじめにドイツ語で。

> Insgleichen gehört in diese Zwischenzeit jener H y m u n u s  a u f  d a s  L e b e n (für gemischten Chor und Orchester), dessen Partitur vor zwei Jahren bei E. W. Fritzsch in Leipzig erschienen ist: ein vielleicht nicht unbedeutendes Symptom für den Zustand dieses Jahres, wo das j a s a g e n d e Pathos par excellence, von mir das tragische Pathos genannt, im höchsten Grade mir innewohnte. Man wird ihn später einmal zu meinem Gedächtniss singen. --- Der Text, ausdrücklich bemerkt, weil ein Missverständniss darüber im Umlauf ist, ist nicht von mir: er ist die erstaunliche Inspiration einer jungen Russin, mit der ich damals befreundet war, des Fräulein Lou von Salomé. Wer den lezten Worten des Gedichts überhaupt einen Sinn zu entnehmen weiss, wird errathen, warum ich es vorzog und bewunderte: sie haben Grösse. Der Schmerz gilt n i c h t als Einwand gegen das Leben: “Hast du kein glück mehr übrig mir zu genben, wohlan! n o c h  h a s t  d u  d e i n e  P e i n . . . “ Vielleicht hat auch meine Musik an dieser Stelle Grösse. (Letzte Note der Oboe cis nicht c. Druckfehler.)
(KSA Bd. 6, S.336。下線は引用者)

 日本語訳は川原栄峰氏のものを紹介しておく。

> 同じくこの中間期に生まれたものとしては『生への讃歌』(混声合唱とオーケストラのための)がある。これの総譜は二年前にライプツィッヒのE・W・フィリッチュ社から出版された。これはこの年〔1882年〕の私の状態を示すおそらくは軽視すべからざる兆候の一つである。なにしろその頃私の中には、私が悲劇的パトスと呼んでいるあのずば抜けた肯定のパトスが最高度に宿っていたのであった。いずれこの歌を歌って私をしのんでくれる人もあろう。---この歌のテキストについては一つの誤解が流布しているのでここではっきりとことわっておくが、あれは私が書いたものではない。あれは当時私が親しくしていた若いロシアの一女性ルー・フォン・ザロメ嬢の驚くべき霊感なのである。あの詩の最後の数句からとにかく一つの意味を聞き取ることのできる人なら、なぜ私が特にあの詩をとりあげて賛嘆したかがわかるはずだ。つまり、あの句には偉大さがあるからだ。苦痛があるからといって生を非難するにはあたらない、という。『なんじ、もはや我に与うべき幸を持たず。さらばよし! なんじいまだ苦痛の持てるあり……』おそらく私の作曲もここの所に偉大さがあるだろう。(Aクラリネットの最後の譜はcではなくcisである。誤植。)
(川原栄峰訳、ちくま学芸文庫。太字強調は訳者。下線強調と〔 〕内の補足は引用者)。

 今はテキストの紹介にとどめておく。


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演奏:
Friedrich Nietzsche - Hymnus an das Leben

http://youtu.be/FIOIUlDB5yU




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