ルー・ザロメの《生への祈り》 拙訳--(《生への讃歌》7)

瀬谷こけし

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Lou Saloméの<< Lebensgebet (生への祈り)>>
 ルー・ザロメ(Lou Salomé)の《生の祈り》(Lebensgebet)の原文と拙訳を示し、若干の解説をする。まずはルーのテキストから。典拠とするテキストは、Lou Andreas-Salomé, Lebensrückblick, Verlag tredition GmbH, Hamburgである。詩はその32頁にある。


Lebensgebet *1)

Gewiß, so liebt ein Freund den Freund,
Wie ich Dich liebe, Rätselleben*2) –*3)
Ob ich in Dir gejauchzt, geweint,
Ob Du mir Glück, ob Schmerz*4) gegeben.

Ich liebe Dich samt Deinem Harme;
Und wenn Du mich vernichten mußt,
Entreiße ich mich Deinem Arme
Wie Freund sich reßt von Freundesbrust.

Mit ganzer Kraft umfaß ich Dich!
Laß Deine Flammen mich entzünden,
Laß noch in Glut des Kampfers mich
Dein Rätsel tiefer nur ergründen.

Jahrtausende zu sein! zu denken!
Schließ mich in beide Arme ein:
Hast Du kein Glück mehr mir zu schenken –
Wohlan – noch hast Du Deine Pein*4).
(イタリックは原著者。*の註は引用者)


 次に参考のために、山本尤氏の訳を示す。

生の祈り

確かに、一人の友が友を愛する
私があなたを愛するように、謎の生---
私があなたの中で歓声を上げたか、泣いたかどうか、
あなたが私に幸福を、苦しみをくれたかどうか。

私はあなたを愛する、あなたの深い悲しみともども、
もしあなたが私を滅ぼさねばならないなら、
私はあなたの手から身を振りほどく、
友が友の胸から身をもぎはなすように。

私は全力でもってあなたを抱く!
あなたの炎で私を燃やせ、
戦いの火の中で私に
あなたの謎をもっと深く突き止めさせよ。

何千年でも考えること!
二つの腕の中に私を囲め、
あなたは私に幸福を贈ることはない---
よろしい、あなたは今もあなたの苦しみをもっている。
(山本尤訳、『ルー・ザロメ回想録』、2006年ミネルヴァ書房、pp.33-34)


 次が拙訳である。

生への祈り(拙訳)

きっと、私がお前を愛するように、謎である人生よ、
友は友を愛するのだ ---
私がお前の中で歓声を上げたにせよ、涙したにせよ、
お前が私に幸(さいわい)を与えたにせよ、苦痛を与えたにせよ。

私はお前の与えた悲嘆とともにお前を愛している。
そしてもしお前が私を破滅させねばならないならば、
私はみずからをお前の腕から救い出す
友が友の胸から自分をもぎ離すように。

全力で私はお前を抱擁する!
お前の炎が私を燃え上がらせるにまかせよ、
闘争の灼熱の中でわたしが
お前の謎をひたすら深く解き明かすのを許せ。

何千年も生きたい! そして思考したい!
私をお前の両腕の中に閉じ込めよ:
お前はもはや私に贈る幸(さいわい)を何も残していないのか ---
ならばよし --- お前はまだお前の責め苦をもっている。



検討3 [Schmerz]と[Pein] *4)
 注の*1), *2), *3) については、先に語った。この詩についてはなおさらに注釈すべき事があるが、この詩には若きルーのなまな思いが、ぴったりと貼りついているということを何よりも感じる。それは「検討2」でも語ったことだが、ドイツ語としてもなますぎて、ドイツ語としては未熟な表現に感じられるところがなくはないのだ。それらの点は、この詩を修正、添削したニーチェの「生への讃歌」の詞においては見られないのだが、その両者の間には、内容のずれが生じてしまっている。それは「Du(お前)」と「Leben(生、人生)」の間の遠さ・近さ、その混同に、とてもはっきりと見て取れることなのだ。つまり、ルー・ザロメにとってこの詩はヘンドリック・ギロートとの別離の記念碑に他ならないものなのだ。だがこの点についての解釈は後に回す。まずはこの詩を解釈する上でどうしても避けられない点、つまり「Schmerz」と「Pein」の使い分けについて、語っておかねばならない。この詩の創作の時期においては、ルーは「生」をギロートへの愛と別離との関りにおいて経験していた。「生」はこのように、ある形を通ってしか経験することができない。その全体性がそのまま与えられることはないのだ。そして、ギロートの胸から身をもぎ離して、ルーはひたすら「生」との関りの中で思索をすすめる。ギロートとの関りの何が自分の中に贈り物として残っているかを検討する。彼の記憶の中にまだ「私」を責める責め苦がのこっているなら、まだよい。まだ彼との関りは生きているのだ。この詩では、この私を責める「責め苦」の意味で「Pein」が使われていると見える。「Schmerz」の方は、より一般的に「苦痛」や「苦悩」を示しているだろう。
(2013.3.25)

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