《ススキ----飛び立つ準備を整えて》 1/4秒の幸福

瀬谷こけし
 去年まではほとんどフィルムで写真を撮っていた。それで何が楽しかったかと考えると、1/4秒の時の間を共有することだった。被写体と、つまりは草や花と。中版、もしくは大版のカメラを使っていた。シノゴのフィールドカメラ。それからマミヤの67。そしてハッセルブラッドを手に入れてからは主にそれで。どのカメラでも撮り方はほとんど同じだった。絞りはほぼいっぱいまで絞る。f/45とかf/32とかまで。フィルムはフジのプロビアが中心だ。ISO100のフィルムだから、撮ろうとすると、だいたい1/4秒ぐらいのシャッタースピードになる。必ず三脚に載せて、ミラーアップして撮る。そうしてセットしてから、風の止まる1/4秒間を待つ。ずっと待つ。風よ吹くな、と祈るようにして。
 そんな写真をまた始めたくなった。だが今のデジタルカメラだと絞ってもf/22ぐらいまでなので、1/4秒は難しいかもしれない。高速なシャッター速度は、やはり、撮影者本位の時間になってしまう気がする。カメラマンが鮮明な映像を手に入れるためのスピード。しかし1/4秒なら、事情は違ってくる。草たちと、花たちと、時間を共有することができる。それは同時に環境を共有する時間になる。風、光、そして水分。そんな環境を共有して、そしてしばらく、時を共有する。

 そんなことを考えていたが、今日はバイクなので、三脚を用意してない。ただできるだけシャッタースピードを落し、ISO感度を落して撮影をしていた。ブレた写真はやっぱり使えない。90mmのレンズ一本で、1/160秒のシャッター速度で撮ることにした。久しぶりに穏やかな天気だった。ここには貴婦人と呼びたくなるススキがある。夕方の光に、キラキラを穂を輝かせ、なびかせていた。
 小穂の毛が銀色に輝く。種たちは飛び立つ準備を整えて、さらに何かを待っている。


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この記事へのコメント

2013年12月25日 23:34
バイクで三脚をどう持って行くかと考えていたら、鉄砲を担ぎ90CCのバイクに乗って峰越峠を越えて出羽沢やなめとこ山の辺りに熊狩りに来ていたという善六さんのことを思い出した。わたしが「なめとこ山の熊」を書くなら、あの人こそ主人公にしたい。

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