《何かおいしいものを》

瀬谷こけし
 今日同志社の春学期の期末の試験をして、これで前期の授業は終り。ドイツ語応用2、3の授業はこれで終わりになるので、授業でその学生たちと会うのも今日が最後だ。毎回疲れたが、今日の試験の学生のできは素晴らしかった。応用2ではヘッセの"Beim Schlafengehen"を訳せという課題を出したが、かなりの数の学生がもう一歩というところまでできている。構文がそう難しいわけではないが、ヘッセの詩の中でも非常に深い思想を語っているこの詩の、本質的なところまで理解を届かせている学士が少なくなかった。たった一年半の勉強でこんな所まで、という驚きが隠せなかった。同志社は学生が自分で伸ばして行きたいと思っていることを伸ばして行ける環境を用意している素晴らしい大学だという印象をもった。もうほんの一歩、押さえるべき連関を教えて行けば、自力できちんとした理解と詩の翻訳ができるようになる。もうほんの一歩。最後のところでは、自分のもつ言葉の力、国語力こそが問題になるが、もう少しでそういうところに行ける、ということだ。
 課題にどの詩を選ぶか、このことのためにこの一週間を費やしたと言っても過言ではない。ヘッセの詩は、それぞれ魅力はあるものの、弱いという印象がしていた。だからヘルダーリンにしようと考えていたが、授業で読んでいたものが主にヘッセの詩や随筆だったので、できれば同じ作者のものと考えていて、結局この「眠りにつこうとして」に行き着いた。最後の詩聯は死に面した、夜の魔境の恐るべき豊かさに参入している。
 この学生たちの深みに、そして将来を、期待したい。

 それで疲れて、満ち足りて、今日ぐらいは何か美味しいものを食べたいと思った。それで思い付いたのが、「とようけ屋」のにがり豆腐。---それで「マイケル」に行ったが、にがり豆腐は一つも残っていなかった。それであたりを探してまわったが……。
 結局、食べてみようかなと思ったのが、出し巻き玉子。普段めったに買うこともないものだが。
 夕食に食べてみると、そう驚くようなものではなかった。それよりは、夕食に自分で作ったしぎやき茄子の方が美味しかった。これは相当に美味しい。京都産の茄子の素材の美味しさもあるが、作り方にも、出し汁や八丁味噌の他に、ここ二回ほど試みている秘密がある。これが驚くほど成功している。「秘密」と言っても、なーんだと言われるような簡単なことだが。だから秘密にしておく。

(2014.7.23のfacebook掲載記事の若干修正した再録)



補足:
ヘッセの詩「眠りにつこうとして」

Beim Schlafengehen
(Hermann Hesse)

Nun der Tag mich müd gemacht,
Soll mein sehnliches Verlangen
Freundlich die gestirnte Nacht
Wie ein müdes Kind empfangen.

Hände laßt von allem Tun,
Stirn vergiß du alles Denken,
Alle meine Sinne nun
Wollen sich in Schlummer senken.

Und die Seele unbewacht
Will in freien Flügen schweben,
Um im Zauberkreis der Nacht
Tief und tausendfach zu leben.


できれば近々この詩の翻訳を試みたい。この詩は、ヘッセがヘルダーリンのものと考えていた「夜の詩想」に非常に近づいているように見える。わたしは、「生の全体性」というヘルダーリン的な考えが、ルー・ザロメの思想的確信となぜかくも似ているかという問題に強く関心を惹かれている。「Zauberkreis der Nacht」を語り、その中で深く生きたいと語れたことが、ヘッセのこの詩の最も大きな生命であろう。



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