《みなが荒井由実をほめすぎるので---「翳りゆく部屋」》

瀬谷こけし
  「ひこうき雲」をきちんと理解したくて荒井由実のアルバム『日本の恋とユーミンと。』を買って聴いていた。ここ一月のこと。分かったことはわたしは「ユーミン」はともかく「荒井由実」には重要な問題の押さえがあるということ。「翳りゆく部屋」と「ひこうき雲」の二作が大事だと思う。「翳りゆく部屋」の方は、別れの理由を最終的には「運命」とみること。それによって「運命愛」が生まれているということ。---だが彼女はこの問題を発展させても、深めてもていないように見える。「ひこうき雲」の方は、「はやすぎる(死だ)」と思うけれどその空へと進むまっすぐな生き方には「しあわせ」がある、と見るという見方。これはどんな短い生にも春夏秋冬の四時がきちんとあるのだから、嘆くことではないとする吉田松陰の「四時の説」とよく似た肯定的な死の理解があるという点で、やはりとても深く、素晴らしいものがあると思う。---宮崎駿の『風立ちぬ』は、「ひこうき雲」をテーマ音楽にしていながら、「ひこうき雲」と「風」以上に「飛行機」にこだわってしまったように見える。それで主題が曖昧になってしまった。
  ともあれ、荒井由実の「翳りゆく部屋」をパラフレーズしてみたので、それを紹介する。彼女が卓越した詩人であったことを、またどこかで書きたいと思う。


荒井由実の「翳りゆく部屋」
(その歌詞のパラフレーズ)

あなたは夕陽を見ていた。
思い出話もとぎれがちになる。
---あのときも夕陽がきれいだったね。ふたりでずっと見ていた。何を話していたんだろう。気がついたときにはすっかり暗くなっていたね。
わたしは何も言えない…。
彼がもう、どんなことがあっても戻らないことをしっているから。
---そうね、いい時間でしたね。そして楽しかった。
返事はない。
---でも、お日さまの方がわたしたちより長生きするわよね。
---ああ、そうだ。
わたしは、思い出話を持ち出す気もなくなってくる。もう終ったのだ。
待ちすぎないように、と彼は立ち上がる。それが彼のやさしさなのだ。わたしを痛めつけすぎないようにとの。逃げられる場所を少しは残しておいてくれる。
長い沈黙が生まれそうになる。
---じゃあな。ここまでにしよう。彼女が待ってるし。
わたしの返事を待つこともなく彼はドアを開けて、部屋を出てゆく。振り返らない。わたしも何もいわない。何もいえない。
開いたドアの隙間から一瞬風が吹き込んでくる。
顔を上げて、そちらに目をやる。外はもうすっかり夕方だ。
さよならも言わなかった。
誰が悪いとも、何が悪いとも言えない。
これがわたしの運命と、そう思うだけ。そう認めるだけ…。
(この部屋からわたしはしばらく出られそうもない。
たといわたしが今死んでも、どうにもならないことはよく分かっている。
どうしたらいいのか?)

=== 注 ===
  この「翳りゆく部屋」を解釈するためには「海を見ていた午後」を背景に置くとよいと思う。前者の「どんな運命が」という問いは、後者の「あのとき目の前で、思い切り泣けたら」という出来なかったことへの後悔を逆から、裏から、より深い照明で照らしている。後者からは「(わたしを)忘れないで」という(未練の)主題が繰返し生み出されてくるだろう。前者からは「運命愛」の主題があふれてきてよさそうなものなのだが。
(この記事はアマゾンのカスタマーレビューに書いたものをベースにしています)




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