《カターニアで》

瀬谷こけし
《カターニアで》
 イタリア人のひとあたりの暖かさというのは、ローマでもずいぶんと感じたことだが、ここシチリアのカターニアに来ると、それがもっと深い気がする。(ひとあたりが)やわらかで懇ろで、困っている心の深いところまでなんのけれんみもなく入ってくる。
 実を言えば今日は二回道に迷った。はじめは駅からホテルを探していて。これはもう二時間は迷って、八方ふさがりで、どうしようもなくなっていたところで、B&Bホテルの別のところの案内標識をみつけて、そこに行けば予約をしている同系のホテルの案内をしてくれるのではないかと期待して門前まで行ったが、まったくにべもなく断わられた。
 すっかりしょげて戻ってくるところにさっきそのホテルの場所を尋ねて教えてくれたカフェの店のおばさんがいて、ダメだったのだと話すと、しっかり話に乗ってくれる。まずホテルの場所(の可能性のある)場所としてわたしが聞いている住所を、私が駅のタバッキでもらった地図で教えてくれる。つまり私はメールで、ある住所と電話番号、そしてメールアドレスを聞いているのだが、それが果たしてほんとにそのホテルの所在地なのか、それとも単なる連絡先の住所なのか、それがわからない。おばさんが教えてくれた場所は、わたしが見当をつけていた場所とはずいぶん離れていたのだ。私は海外ではそういう設定にしているので、携帯電話が使えない。そしてメール等はWi-Fiが使えるとことでしか使えない。つまり宿でパスワード等をきいて、そしてその受信範囲でしか使えない。だから場所探しに使えないのだ。せめてブッキングの時に調べた地図を写真に撮っておけばよかったと思うのだが、そんなことも後の祭りだ。まったく途方に暮れていた。
 そんなところに、学者の雰囲気の若い男性が加わてくれて、彼の携帯で電話先にかけてくれて、私が予約している者だがホテルの場所がわからず、住所(通りの名と番地)もわからないことを告げるが、何ともはかどらない。それで電話をおばさんに代わってもらって、話を通してくれる。それで、連絡場所とホテルの場所とが同じ事がわかるのだが。
 すると先ほどから話を聞いていてくれたおばさんの友人の女性(アンナさんと教えてくれた)が、一緒にそこまで連れて行ってくれる、と言ってくれるので、お願いすることにした。そして途中、町の名所となるところをいろいろと教えてくれて、写真を撮ってゆけと勧めてくれる。バロックの建物がそのまま残っている街区も通ってくれた。
 そうやって、概して細い道を通って、宿まで案内して、呼び鈴まで押してくれた(私は別の方のものを押してしまっていた)。それで、扉が開くと、私に中に入れと言って、さっとばかりに戻っていってしまったのだ。ありがとうという時間だけしかなかった。その見事な引き方に、まず何よりも驚いたのだった。---ある程度のお礼はしたかったのだが、その機会をアンナさんはすっと断ち切ってしまったのだ。
 夕方も外に出て、迷ったらいけないからわかる範囲で戻ろうとして歩いたが、やっぱりわからなくなってしまった。そんな風にして店が大体締めはじめる8時をだいぶ過ぎても、ますます見当がつかなくなっていってしまった。そして奇妙な面のついた門の近くまできて、これなら何か標識になるだろうと思って地図を探すがなかなかわからない。ここが初めて来た場所なのはわかるのだが。そこに、穏やかな雰囲気のおじさんが来たので場所を尋ねた。これがガリバルディ通りだということはすぐに教えてくれる。そしてさらに、眼鏡を老眼鏡に変えて、私の持っている地図をしらべてここだと教えてくれた。---それで助かった。あとは、道を正しく二回曲がればわかるはず…。おじさんはそこのバールに入っていった。わたしはありがとうと言ったが、出てきた言葉は英語だった。グラッチェーと、正しく、正しく心が乗るように言えるようになりたい、と。挨拶を正しくできるようになれという教訓は、わたしがイタリア旅行で学んでいる最も大きなことではないかと思っている。正しく、適切な間の取り方で、グラッチエーとか、チアオとか、言えるようになりたい。

 メッシーナは欠かせないが、カターニアだけでずいぶん素晴らしいところがあるので、シラクサはまた別の機会にしてもよいかもしれないと今思っている。

カターニアでバロック
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追記:
夕方から夜の街を歩いた印象でいうと、インドネシアの港町とよく似た雑然とした活気があるように思いました。床屋も夜に行く人が多いのか100mの範囲に3軒もあって、これもひとつの高齢者の社交場になっているようです。それと比較的遅くまで繁盛しているパン屋を見ると、売り子がきれいな奥さんという店が多く、買い物がある種の社交になっているように感じました。また例えばトランプをやっているところ、玉突きのようなことをやっている場所もあって、立派な大人が社交を楽しむ場という印象がつよく、大人の男性が目立ちます。またローマと比べるとたいていの人に英語が通じません。店で見せている商品を注文して買うだけならなんとかできますが、ひとつ驚いたのが缶ビールを売っている店が見当たらず、瓶のものばかりで、栓抜きがないので買えなかったことです。ローマのスーパーでは缶ビールが手に入ります。まだ宿から駅まで行けるかどうか、きちんと地図で確認しながら歩けば大丈夫だと思いますが、昨晩で言えば、たぶん駅までは歩いて行けたと思いますが、逆に駅から宿に戻る方を慎重にやらないと、自分がどこにいるのか、見失いやすいと感じます。日本でも新しい町ではたいてい宿から夜歩きをして、まず宿と駅の間の行き方を確実にして、それから少しずつ歩ける(歩いて、戻れる)場所を広げてゆくことをするのですが、日本では地図なしでもほとんどそれに失敗することがありません。思い出すのが沖縄の久高島の村内が迷ってばかりで、ほとんどまともに歩けなかったことです。港町だと、よそ者をまいてしまって身の安全を図るという仕掛けがあるのではないかと思います。目的地に近づいているつもりが、分かれ道での選択がむずかしく、かえって遠くへ行ってしまったり、それでまた同じ通りに戻っていたり、などです。またこの宿、部屋は大変立派なのですが、ホテルとは違うようです。貸し部屋といった感じでしょうか。建物の玄関から部屋までのカギを全部もらっています。それと最後にもうひとつ、テレビのチャンネルがうまく入らず、入るのはドイツ語放送のものばかりです。シチリアがフリードリッヒ二世が国王だったことの文化的伝統がこんなところにも続いているのかもしれません。

追記2:通り名を一つ修正しました。文章も少し直しました。(2013.3.25)

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