《ゲーテの「故郷」(Heimat)概念》

瀬谷こけし
ワイマール 劇場前広場の花
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 1823年11月3日のエッカーマンとの対話の中に、ゲーテが「ハイマート(ふるさと)」について述べているところがある。ゲーテはこんな風に語る。

> Alle diese vortrefflichen Menschen, zu denen Sie nun ein angenehmes Verhältnis haben, das ist es, was ich eine Heimat nenne, zur der man immer gerne wieder zurückkehrt.
(Gespräch, Montag, den 3. November 1823)

 試みに訳してみる。

> 君がいま気持ちの良い関係をもっているこれらのすぐれた人たち、それこそがわたしがハイマート(故郷)と名づけるものであり、ひとがいつでも喜んで戻ってゆきたいと思うものなのだ。


 このゲーテのハイマート(故郷)概念は、とても新鮮なものに見える。それ(故郷、ハイマート)は場所ではなく、すぐれた人々との関係のことなのだ、というのだ。この「ハイマート」概念は、日本語の「故郷」概念にも当てはめることができるだろう。
 わたしは以前ヘルマン・ヘッセの「故郷(ハイマート)」概念について紹介したことがある。ヘッセは、「故郷はお前の中にある、さもなければどこにもない」と言った(Hermann Hesse Bäume, insel taschenbuch 455, S.11)。ヘッセの言う「故郷」は自分がかつて親の与えてくれた庇護の下で安心して暮らしていた「空間」のこと、庇護された空間のことを指しているだろう。それはしかしゲーテの「故郷」概念にさかのぼって考え直せばまた別の展望が開けてくるだろう。故郷は今も築いて行ける。わたしにとっては、高山に行ったときに友人がいつも連れて行ってくれる「あんらく亭」での気持ちの良い人間関係の空間は、このゲーテの言う意味での故郷、ハイマートだろう。ワイマールで、かつてゲーテはそういう空間を作っていたのだ。そういう空間は、大事にしたい。

 他方でヘッセの考えるような故郷の空間は、われわれが子供たち、孫たちに創ってやらなければならないものだろう。






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