《ひとつの詩を作曲しようとするとき》

瀬谷こけし
ワイマール 1920年のある碑銘
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 メンデルスゾーンを育てた作曲家として知られているかもしれないツェルター(カール・フリードリッヒ)(Carl Friedlich Zelter)は、ひとつ詩を作曲しようとするときのことをこんな風に語っている(『ゲーテとの対話』1823年12月4日)。もちろん、誰かの詩、例えばゲーテの詩に曲をつける場合のことだ。

> >>Wenn ich ein Gedicht komponieren will,<< sagt er, >>so suche ich zuvor in den Wortverstand einzudringen und mir die Situation lebendig zu machen. Ich lese es mir dann laut vor, bis ich es auswendig weiß, und so, indem ich es mir immer einmal wieder rezitiere, kommt die Melodie von selber.<< (Gespräch mit Goethe, Donnerstag, den 4. Dezember 1823)

 ここには他人の言葉を理解するための最も基本的なことが言われていないだろうか? まずは「Wortverstand」つまり「言葉の理解」を徹底して推し進めてゆくのだという。そうしてその詩の状況(Situation)が生き生きとわかるようにしてゆくのである。それから、その詩を暗唱できるまで大きな声を出して読むのだという。そうして何度も何度も朗誦(rezitieren)しているうちに、メロディーがおのずから出てくるのだ、という。

 これは京都造形芸大通信教育部の「詩と音楽への案内」という科目でわたしが指示していた言葉の理解の方法とまったく同じではないだろうか?

 芸術は、言葉の芸術は、このようにしてはじめて深く他者に聞き取られるのではないだろうか。

 そして、そのようにして理解された物事に自らの言葉を交差させるときにはじめて対話は成り立つのではないだろうか?

 (作曲家)ツェルターの場合は、メロディーをその詩につけることが対話なのだ。芸術、つまりムーサイの術は、深い対話の術でもあるはずなのだ。




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