《ゲーテとベルリン》

瀬谷こけし
ベルリン シャルロッテンブルク城の前
画像



 (同じく)1823年12月4日の『対話』の中でゲーテはベルリンについてこう語っている。これはわたしには少なからず驚くことだ。

> Es lebt aber, wie ich an allem merke, dort ein so verwegener Menschenschlag beisammen, daß man mit der Delikatesse nicht weit reicht, sondern daß man Haare auf den Zähnen haben und mitunter etwas grob sein muß, um sich über Wasser zu halten.(下線強調は引用者)


 ここのところ。キンドル版の訳を紹介しておく。

> 私の見るところによると、総じてあそこには向こう見ずな連中がより多く集まっている。それでお上品なだけでは暮らしてゆけないんだ。安全に暮らそうと思えば、時には粗野にさえ振る舞わなければならないんだよ。(下線強調は引用者)


 このゲーテの発言は、ツェルターについての意見を求められたときエッカーマンが、ただ「気持ちのよい性格のひとだ」(das durchaus Wohltätige seiner Persönlichkeit)と、あまりはかばかしいことを言わなかったことに対して、ゲーテが補足しつつ、彼(ツェルター)の多少武骨(derb)で粗野(roh)なところを弁護するような形で語っているところだ。実際その前の部分ではツェルターの振る舞いがやや厚かましくみえるように叙述されているのだ。

 ゲーテはまず、ベルリンには大胆な(向こう見ずな)種族の人間が集まっている、と彼のまず第一に注意している点を語っている。わたしはこの指摘が、ゲーテの並々ならぬ感受性を示していると思う。ベルリンとは、今もそういう街ではないだろうか? また、例えばウド・リンデンベルク(Udo Lindenberg) の傑作「ヘルミーネ」(Hermine)を聴いても、ベルリンの街のその性格が顕著に示されているように思う。

 そういう町で生活してゆくとなると、万事につけそういう連中との付き合いが重要になり、「Delikatesse」(繊細な感覚)だけでは出世してゆけない。
 そして「歯の上に髪を乗せて」(Haare auf den Zähnen haben)(激しい自己主張をこととして)、そして時々いささか粗野にならなければならない。そうでないと、自分の身を水の上方に保っておくこと(sich über Wasser zu halten)ができないのだ。つまり、川の中に投げ込まれるはめになる、と言う。
 ベルリンではご用心をということであるが、長いことベルリンにいて多少とも出世しようと思うなら、どうしても自分を粗野にしなければならないのであり、そういうことを理解しておけばツェルターという人間は、いささか武骨で粗野であっても同時に脆弱繊細(zart)でもある、とても稀有な人間なのだ、というのである。
 ゲーテの、大変デリケートな広範にわたる知識をもち、繊細でありつつ寛容で、きわめて大きな包容力のある人柄を如実に示すエピソードであろう。









Hermine
Imports
2007-08-21
Udo Lindenberg

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Hermine の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック