《ドイツ語の授業 ヘルマン・ヘッセ 三回目》

瀬谷こけし

今日は同志社のドイツ語の授業、今年度三回目。「応用」の方の授業は、早速二回目の読解になった。テキストとして読んでいるヘルマン・ヘッセの「樹々」というエッセーに次のような言葉があった。

>Wer mit ihnen(=Bäumen) zu sprechen, wer ihnen zuzuhören weiß, der erfährt die Wahrheit.

「樹々と語り合うことのできるひと、樹々の語りに耳を傾けることのできるひと、そういうひとはほんとうのことを学び知ることができるのだ」
とういぐらいに訳せるだろうか。樹々は「生きることの根本的な掟」(das Urgesetz des Lebens)を説いてくれるのだとヘッセは言う。

 わたしも数年前に、樹々ではなく空き地の雑草たちだが、三年間通い続けて、彼らからそんなこと、「生きることの根本的な掟」を学び取らせてもらったことがある、と感じている。そうして一度写真の個展を開き、そして『むろのつ』21号に、「地域学のすすめ---草木虫魚悉皆成仏」を書かせてもらったのだった。

 「生の根本法則」、それは仏教的に表現すれば無明ということではないのか? おのおのの生がおのれの内には神があって、(その神の与える)おのれの課題は神聖だと信じること、このことこそ無明なのではないか? ここでヘッセは「神」を無冠詞で使っている、とはいえ(*)。文脈を考えればこの「神」は、「わたしの神」(mein Gott)と呼ぶべきものなのだ。「わたしの神を信じるエゴイズム」これこそ無明な生そのものなのだ。

 仏教は、無明の自覚こそ、覚醒への第一歩だと言い、そしてまたヘッセも、その方向に思考を進めてゆくのではあろうが。


 ともあれここでヘッセはそれを真実(die Wahrheit)と呼んでいる。樹々にも人にも共通する生の無明という根本法則を。





注*
そこのところの原文を紹介しておく。
>Ich vertraue, daß Gott in mir ist. Ich vertraue, meine Aufgabe heilich ist. Aus diesem Vertrauen lebe ich.
(Hermann Hesse, Bäume, Insel Taschenbuch 455, S. 11)




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  • 《地域学のすすめ---「草木虫魚悉皆成仏」》

    Excerpt:  以下の原稿は『会報 むいろのつ』(発行、「嶋屋」友の会)第21号のための原稿である。発行から既に一年余を経過しているので、発行元への義理立てももう十分だと考える。実は昨日赤坂.. Weblog: 「世界という大きな書物」  中路正恒公式ブログ racked: 2017-04-27 01:03