《ルー・アンドレアス-ザロメのニーチェ把握》

瀬谷こけし

《ニーチェの思想石(Denk Stein)》
画像
スイス・シルスの岬、2017年8月8日撮影


 ルー・アンドレアス-ザロメはその著書『ニーチェ』を次の言葉で閉じる。

> Denn auch uns tönt ein erschütternder Doppelklang aus seinem Lachen entgegen: das Gelächter eines Irrenden – und das Lächeln des Überwinders. (Lou Andreas-Salomé, 1894, S. 263)

ルーはニーチェの笑いのなかに相互に対抗しながら震える二重の響きを聴き取る。そしてこの二つの響きの間に、いわばニーチェの最後の、そして最高の精神の形を捉えるのである。---多くの予備的な説明が必要なことではあろうが、そのルーの聴き取る声、響きは、何とすさまじいものだろう。そしてこの声を聴き取ることは、なんと素晴らしいことだろう。ルーは、きわめてよい耳をもっていたのだ。あの、アリアドネの小さな耳を。

 それは訳せば、次のような響きだ。ひとりの狂いつつある者の哄笑と、そして狂気をも超克した者の微笑と、とルーは言う。この二つの笑い声が二重になって鳴り響いているというのだ。震えながら、振動しながら、互いに拮抗し打ち消し合いながら、と。この二重に響きあう声を残してニーチェの精神は黄昏の中に消えてゆくと。克服した者の微笑と、狂人の哄笑と。---これは何と深く、何と的確な捉え方だろう。没落する者として生を讃え、底なしの生の苦悩を讃え、生に黄金の薔薇の花環の冠を被らせながら、他方ではその生を生々しく呪詛しながら。このような二重の笑いの交響の中にルーはニーチェの最高の思想を聴き取るのである。


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