《セガンティーニのWINDIGER TAG》

瀬谷こけし


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 去年スイスのシルス・マリーアに滞在していたとき、時間を見つけてサン・モリッツのセガンティーニ美術館に行った。そこで展示していた作品の中でも、この一枚はニーチェが逗留していたころのシルス・マリーア付近の様子をとてもよく示しているように思った。タイトルは「風の強い日/アルペンの中の昼」というもの。1891年の作だという。
 翌日にはシルスからひとつ奥の村に当たるマローヤ(Maloja)にも行ったがその時は時間の都合もあって、セガンティーニ関係のものを見ることはできなかったが、観光地としては今一歩発展していない村に見えた。湖で言えば同じシルス湖の西側(シルスが東側)という位置なので、伝統的な生活スタイルという点では大差のないところだろう。冬の厳しさを感じさせる山岳風景も、ロープウェーなどの施設の有無を除けばよく似ていて、昔の風景はかえってマローヤの方からよく感じ取れるかもしれない。
 セガンティーニは1886年からサン・モリッツ(St.Moritz、現地訓みだとザンクト・モリッツ)の近くに住んでいたので、もしかしたらその付近でニーチェに出会っているかもしれない。マローヤに住みはじめるのは1894年からだという。
 セガンティーニは、伊東静雄も好んでいた作家で、アルプスの農牧民生活を描く画家という印象だったが、今回美術館の作品を見てわかったのは、民俗学的な細部への関心はあまり豊かではなく、むしろ何よりも光の透明感に魅せられた画家だということだった。それと激しい天候の変化か。この絵も、強風が吹いている日の光景というよりは、これから激しい風がやってきそうだと感じ、観察している光景ではないかと思う。青服の女性の顎のふくらみの豊かな顔つきは、この地方の女性の美人の典型ではないかと思う。サン・モリッツあたりでもよく似た(薬のカプセルを短くした顔のラインをした)若い女性をしばしば見かけた。
 この、アルペンの光の中には倖せがとても鋭い形であるのだろう。


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