《ニーチェの「南国で」という詩》

瀬谷こけし


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 はじめ『メッシーナ牧歌』に収められ、やや後に『プリンツ・フォーゲルフライの歌』に収められたこの「南国にて」という詩、これをわたしは一昨年シチリア旅行中に読んでいたのだが、ニーチェもこの詩を多分シチリアのメッシーナで作っている。この詩の最初の聯のなかの自分を客として招いた一羽の鳥は間違いなくワーグナーを指しているだろう。だからこの詩は大きく言えば、ワーグナーと決別するという不退転の決意を述べたものであり、また、ワーグナーと決別して、やんちゃな小鳥たちと空を漂うという生き方を選択したということを意味する詩だ。小鳥たちのなかにはパウル・レーがおり、ペーター・ガストがおり、そしてその他の若い友人たちがいるだろう。しかしそれにしても危険な道だ。ワーグナーから離反して生きることは。---その決心のために彼には南方の、メッシーナへの旅が必要だったのだ。
 そんな意味で、これは非常に重要な詩だと思う。その原文と拙訳をお見せする。もうちょっとマシな訳ができるだろうとは思いながら、とりあえず逐語訳に近いものをまずは提示しておきたい。誤訳など気づかれたところがあったらお教えいただければ幸甚。

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Im Süden
Friedrich Nietzsche

So häng ich denn auf krummem Aste
und schaukle meine Müdigkeit.
Ein Vogel lud mich her zu Gaste,
ein Vogelnest ist's, drin ich raste.
Wo bin ich doch? Ach, weit! Ach weit!

Das weiße Meer liegt eingeschlafen,
und purpurn steht ein Segel drauf.
Fels, Feigenbäume, Turm und Hafen,
Idylle rings, Geblök von Schafen, –
Unschuld des Südens, nimm mich auf!

Nur Schritt für Schritt – das ist kein Leben,
stets Bein vor Bein macht deutsch und schwer.
Ich hieß den Wind mich aufwärts heben,
ich lernte mit den Vügeln schweben, –
nach Süden flog ich übers Meer.

Vernunft? Verdrießliches Geschäfte!
Das bringt uns allzubald ans Ziel!
Im Fliegen lernt ich, was mich äffte, –
schon fühl ich Mut und Blut und Säfte
zu neuem Leben, neuem Spiel ..

Einsam zu denken nenn ich weise,
doch einsam singen – wäre dumm!
So hört ein Lied zu eurem Preise
und setzt euch still um mich im Kreise,
ihr schlimmen Vögelchen, herum!

So jung, so falsch, so umgetrieben
scheint ganz ihr mir gemacht zum Lieben
und jedem schönen Zeitvertreib!
Im Norden – ich gesteh's mit Zaudern –
liebt ich ein Weibchen, alt zum Schaudern:
"die Wahrheit" hieß dies alte Weib ..

(Nietzsche, Friedrich Wilhelm. 26 Gedichte (German Edition) . Kindle 版.)
(V.14, [Vügeln]をKSAに従って[Vögeln ]に訂正)

南国にて
フリードリッヒ・ニーチェ(拙訳)

こうして曲がった大枝の上に止って
自分の疲労を揺さぶっている。
一羽の鳥がわたしをここへ客として招いてくれた、
これはひとつの鳥の巣で、そのなかでわたしは休む。
しかしわたしはいったいどこにいるのだ? ああ、遠い! ああ、遠い!

白い海は眠り込んでいる。
そして海の上に一隻の船が深紅の帆を立てている。
岩塊、イチジクの木、塔そして港、
牧歌を歌う鉦(かね)、羊たちの鳴き声、---
南国の無垢よ、わたしを受け入れよ!

ただ一歩一歩 --- それは生きることではない、
絶えず足の前に足を出すこと、それはドイツと鈍重を作る。
わたしは風に命じた、わたしを持ち上げろと、
わたしは鳥たちとともに空を漂うことを学んだ、---
南国へわたしは海洋をこえて飛んだ。

理性だって? それはめんどくさい仕事だ!
それはあまりにも早くわれわれを目的につれてゆく!
飛行しながらわたしは学んだ、何がわたしの猿まねをしているのかを、---
すでにわたしは感じている、勇気を、血を、そして果汁を
それは新しい生へ、新しい遊びへ導くもの。

独りで思考することをわたしは賢明と名付ける。
だが独りで歌うこと --- これは愚劣だ!
だからきみたちを称賛する歌を聞き給え
そしてわたしのまわりに輪になって静かに座り給え、
きみたちやんちゃな小鳥たちよ、ここに来て!

かくも若く、かくも大仰に、かくもいら立って
きみたちはすっかり愛へと駆り立てられているようにわたしには見える
そしてあらゆる美しい暇つぶしへと!
北国で --- わたしはためらいながら告白する ---
わたしはひとりの遊び女を愛していた、ぞっとするほど年老いた女を:
この老いた女は、名前を「真理」と云った...。

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