《静原晩秋の草地》

瀬谷こけし

 12月20日、 大原里の駅での買い物をしたあと静原によった。バイクで行ったが、この日は装備をしっかりして行ったので寒いことはなかった。静原ではたいていK字路のところでひとやすみする。ベンチがあり、自販機がある。たいてい自販機で何かを買って、そこのベンチで飲みながら休憩する。静原がこんなに気に入ってしまったのは、「七彩の風」に行ってからだ。もちろん普段は「七彩の風」まで行かないし、その奥にも行かない。だが一度訪ねたことで、村の生活の形が少し見え、そして土地の生産的な力に立脚した生業の形が見えてきたからだ。例えばK字路の近くにもビニールハウスがあって、三色スミレなどの鑑賞用の花を育て、それを出荷して経済を成り立たせている。「労働はひとを自由にする」という思想は誤用さえされなければ深い真実を捉えているだろう。

 一枚目の写真は、そこのベンチからいちばん正面に見える植物だ。それをちょっと近づいて撮った。そしてそこの小川の隣の草の道を奥の方へ少し入って行った。10mか20mか、そんなところだ。そして何枚か撮っているうちに、この景色の中のエッセンスが見えるようになってきた。サヌカイトのような楽器をいじっていていい音が出るポイントが分かって来るのと同じ感じだ。そこからの撮影は悦楽としか言いようがない。次から次に美が見えてくるのだ。レンズはキャノンEF135㎜一本だけ。このレンズが驚くべき合焦の点々を捉えてくれる。息をつかさぬような映像の連続。撮影の醍醐味を味わう時間だった。
 
 クライマックスの一定の持続の後にはアンチクライマックスのものの見え方になってくる。そこにある葉や花が、ひとつずつ、隣接するものたちの中でおのれを語りながら見えてくる。この風土の中で、この風土を形成しながら、それぞれ生命の時をもっている。


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