「世界という大きな書物」  中路正恒公式ブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS 柳田国男の『山の人生』 --- 和田佐次郎のこと少し

<<   作成日時 : 2009/01/08 17:19   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 2 / コメント 0

瀬谷こけし
柳田国男の『山の人生』の冒頭に挙げられている子殺しの話。柳田が法制局にいて、警察関係の書類からその件を知ったのであれば、ああいう話になるのは仕方がないところもある。ただあれだけ米にこだわったストーリーに仕上げたのは、柳田が山の生活を、山の人生をほとんど知らなかったということが大きく響いている。奥美濃の話を、西美濃の話に置き換えて語った配慮はわからないではないが、しかしかといって寒水の村では当時も焼畑による畑作が普通に行われていたことぐらいはちょっと調べればわかるはずのことだ。そいう村であれば、アワやキビやヒエやソバや豆や川魚やミズナラの実など、山での生活はそう不自由なくできただろうことは想像がつく。住処(「新四郎屋敷」)の近くに茗荷のちょっとした群生があるのは(それを川野和昭さんが発見した)、そこに普通に人が住んでいたことの証拠だ。

 ともあれその「山の人生」の主人公、斧(ヨキ)で二人の子供を惨殺した男の名は和田佐次郎というらしい。谷川健一の『柳田国男の民俗学』*)の中にその名が出てくる。それもまたどうでもいい話だが。

 問題は『奥美濃よもやま話』**)の「新四郎さ」の話を知っているはずの人たちの力不足だ(1)。読解力不足。つまり娘を村の有力者のところに女中に出すことのできる家がどういう家かということだ。ここに立ち止まって、少し考えるならば、「新四郎」の実家の家柄が相当によいものだったろうことは想像がつく。果たして数年前に、川野和昭さんと科研の調査のついでに行った寒水で、S氏から聞いた話しでは、新四郎(=佐次郎)の兄が庄屋であったということだった。さもありなんだ。ちなみにS氏は、寒水の村で、この新四郎の話を語ることが許されている二人のうちのお一人だ。そのS氏をわたしは、村の人とのそれまでの付き合いもあり、紹介してもらうことができた。

 まずはこのことだけを紹介しておく。先日赤坂憲雄さんにこのことを話したら、ともあれそれを公にしておくことを勧められたからだ。なかなか一本の論文として記す時間がないので、まずはこの形で公にしておく。


*)谷川健一、『柳田国男の民俗学』、2001年、岩波新書736
**)金子貞二、『奥美濃よもやま話』三、昭和四十九年、奥美濃よもやま話刊行会


=================補注================
内田隆三(『柳田国男と事件の記録』 )を信憑している方は、ぜひともまずは金子貞二の『奥美濃よもやま話』を十分に読み、 当時の山村生活一般についても理解を深め、当時の奥明方村の村の生活(人々のかかわり)がどのようにして成り立っていたか、誤った理解をもたないように十分に留意してほしい。(2014.5.15)


=======補注の補足 2017年9月17日======
(1)は当然上掲「補注」の内田隆三『柳田国男と事件の記録』を念頭に置いている、誤解がないようにそれを補足しておく。もちろん小林秀雄の柳田の権威を越えられぬ力不足、きちんとした思考のできぬ拙さと愚かさも指摘しておかねばならない。さらにそれらにたいするさらに多数の追従者の無意味な思考の数々については、もはや言及する気にもならない。おのれの勉強不足や誠実さの不足ののために虚偽や害毒を世に広めることはやめてほしい。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『故郷七十年』のなかで柳田国男は (『山の人生』のこと)
『故郷七十年』(1974年、朝日新聞社)のなかで柳田国男は『山の人生』の冒頭の「山に埋もれたる人生ある事」に触れている。こんな風にだ。 ...続きを見る
「世界という大きな書物」  中路正恒ブロ...
2009/01/29 04:03
山の人生 柳田国男
柳田国男さんの「山の人生」は大正14年に書かれているが、その当時の… ...続きを見る
npの関心空間
2009/12/27 23:24

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

特集

柳田国男の『山の人生』 --- 和田佐次郎のこと少し 「世界という大きな書物」  中路正恒公式ブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる