《生への讃歌》3 ルー・ザロメの《生の祈り》と《生への讃歌》

瀬谷こけし
 ルー・ザロメの『回想録』(Lebensrückblick)から>>Lebensgebet<<(生の祈り)という詩を紹介する。この詩にニーチェは感激し、楽曲をつけたと言われる。多分その際ニーチェが詩の一部を直し、またタイトルも>>Hyumnus an das Leben<<(生への讃歌)に改めたものと思われる。ルー・ザロメのこの詩は、4行書き4聯の詩であるが、ニーチェの楽譜からは判然としないが、『生の讃歌』の詩も、4行書き4聯の詩と考えるのがよさそうである。まずは>>Lebensgebet<<(生の祈り)の紹介から。

Lebensgebet

Gewiß, so liebt ein Freund den Freund,
Wie ich Dich liebe, Rätselleben –
Ob ich in Dir gejauchzt, geweint,
Ob Du mir Glück, ob Schmerz gegeben.

Ich liebe Dich samt Deinem Harme;
Und wenn Du mich vernichten mußt,
Entreiße ich mich Deinem Arme
Wie Freund sich reßt von Freundesbrust.

Mit ganzer Kraft umfaß ich Dich!
Laß Deine Flammen mich entzünden,
Laß noch in Glut des Kampfes mich
Dein Rätsel tiefer nur ergründen.

Jahrtausende zu sein! zu denken!
Schließ mich in beide Arme ein:
Hast Du kein Glück mehr mir zu schenken –
Wohlan – noch hast Du Deine Pein.

(イタリックは原著者)
(Lou Andreas-Salomé, Lebensrückblick, Verlag tradition GmbH, Hamburg, S. 32)

 この詩を紹介した後でルーはカッコ書きで補足をつけている。「これを私はあるとき記憶から引き出してニーチェに書き付け、彼はそれを元に音楽に仕立てたが、それ以後この詩はより荘重に、詩脚がすこし伸びた形で、世に広まった。」

 次に>>Hyumnus an das Leben<<(生への讃歌)の詩を、フリッチュ版の楽譜から、4行4聯の同じ形の詩として、書き出して紹介しておこう。
(http://www.nietzschesource.org/facsimiles/DFGA/HYM)


Hymnus an das Leben

Gewiss, so liebt ein Freund den Freund,
Wie ich Dich liebe, räthselvolles Leben!
Ob ich gejauchzt in Dir, geweint,
Ob Du mir Leid, ob Du mir Lust gegeben,

Ich liebe Dich mit Deinem Glück und Harme,
Und wenn Du mich vernichten musst,
Entreisse ich mich schmerzvoll Deinem Arme,
Wie Freund sich reisst von Freundes Brust,

Mit ganzer Kraft umfass' ich Dich.
Lass Deine Flamme meinen Geist entzünden
Und in der Gluth des Kampfes, mich
Die Räthsellösung deines Wesens finden!


Jahrtausende zu denken und zu leben
Wirf deinen Inhalt voll hinein!
Hast Du kein Glück mehr übrig mir zu geben,

Wohlan! Noch hast Du Deine Pein… (*)

(下線は引用者)

(*)正確な楽譜からの文字起こしは
http://25237720.at.webry.info/201302/article_7.html
を参照して下さい。また楽譜起し稿の異稿と呼ぶべきものがルーの『神をめぐる闘い』第5章の終わりにあります。そこでは詩は8行書き2聯になっています。

 ご覧のように、異なった点は少なくない。そして、わたしはニーチェが修正した詩の方がはるかに深いものになっていると感じる。ルーとしても、ここに自作の詩を書き付けて残しておくのは少し恥ずかしかったのではないかと思う。だが、最後の一行は何の修正もされていない。ニーチェがこの一行に深く感銘したというのは偽りのない事だったのだろう。ニーチェはこの一行の思想でルーを見ていた。思想、もしくは姿勢で。

 ルーの詩の山本尤氏の日本語訳がある。次に紹介しておく。


生の祈り

確かに、一人の友が友を愛する
私があなたを愛するように、謎の生---
私があなたの中で歓声を上げたか、泣いたかどうか、
あなたが私に幸福を、苦しみをくれたかどうか。

私はあなたを愛する、あなたの深い悲しみともども、
もしあなたが私を滅ぼさねばならないなら、
私はあなたの手から身を振りほどく、
友が友の胸から身をもぎはなすように。

私は全力でもってあなたを抱く!
あなたの炎で私を燃やせ、
戦いの火の中で私に
あなたの謎をもっと深く突き止めさせよ。

何千年でも考えること!
二つの腕の中に私を囲め、
あなたは私に幸福を贈ることはない---
よろしい、あなたは今もあなたの苦しみをもっている。

(山本尤訳、『ルー・ザロメ回想録』、2006年ミネルヴァ書房、pp.33-34)

 今は訳の紹介だけにする。次はこのルーの詩について検討したい。




この記事へのコメント

2013年03月11日 02:23
このルーの詩(《生の祈り》、Lebensgebet)について、訳をつけ、注釈をつけたいと思いながら数日が経ってしまった。精神がだれているとそれができない。というのも、ルーの詩がまともなドイツ語になっているのかどうか疑わしく思えるのだ。注釈をつければそのへんを突っ込まなければならない。実際は、ニーチェが(ルーに何を言いたいのか尋ねながら)添削をして、《生への讃歌》に仕上げたということではないのか? だからこそ、ニーチェと別れてから三年しか経っていない『神をめぐる闘い』の方では、《生の祈り》というタイトルはそのままにしても、ニーチェの手の加わったものを「自作」として提示したのではないか? 晩年『回想録』の中で、やっと問題の多い若書の自作を公表する気になったのではないか?

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