《Web百首1「風には風の」》

瀬谷こけし
奈川渡ダム
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 しばらく短歌の実作から遠ざかっていた。と言っても、「日本歌人」の月一度の例会には欠かさずに出たいと思っていたので、折々詠み残してはいた。それが、先々月ごろから前川佐美雄の『植物祭』を読み直していて、わたしも詠んでみたいという気持ちがふつふつとわいて来た。こういう歌集が許されていた時代、許容されていた時代というのは、現代よりはまだ禁圧が低かったと言える。逆に言えば、前川佐美雄がぎりぎりの責めぎ合いの中で開き残してくれた歌の自由の空間は実に貴重な遺産なのだ。わたしが師と仰ぐ山中智恵子も、前衛短歌革命を果たした塚本邦雄も、この空間のおかげで育つことが出来た。わたしもその恩恵の中で、歌を詠んでみたい。まずは百首歌から。短歌にこそできることが、まだきっとある。


 「風には風の」 八首

○風には風鳥には鳥の道あらむあらむと思ふあるべしと思ふ

○ヤーヤヤドーときこえる声す彼方よりねぶた子ならむ新宿通

○みじめさを知る者ならむ津軽びと太宰治はその津軽人の

○風遠く凍(しば)れる国より来たるらしこの初夏のすがすがしさは

○奈川渡(ながわと)に身を投げし木を見つけたり引き上げられて身をば干しをり 

○鉛温泉(なまり)には湯のあり森の銀の水なめとこ山の熊も飲む水

○あら草のただ二葉のみふるへゐるか細き風の道にあるらむ

○みづうみのひとすぢ波の立つところ尾神の村の橋ならざるや



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