《コルヴァッチ山 2》

瀬谷こけし

 8月7日、コルヴァッチ(Corvatsch)山ロープウェイの中間駅で下りて、こうしてピラミッド石を一つ発見したのだが、それからどうしようかというのが次の問題だった。と言うのも、次にしたかったことは最初に尋ねた女性たちの教えに従って(多分別の)ピラミッド石を探すことだったからだ。だからロープウェイの谷駅まで戻らなければならない。既に中間駅から200mほど下りているので、それをまた登るのはしんどい。このところ足をまったく鍛えていないわたしにとってはむしろ下る方が楽に思えたのだ。それで谷駅に向かって下りて行くことにした。だがそんな道はコースにはなく、パノラマ道を外れてショートカットしてゆく他はなかった。
 はじめは軽快である。苔亀石とか、ウサギよりも大きそうな生き物を見つけたりして順調だったのだが、すぐに限界に来た。何と10mほどの崖に出たのだ。ここは下りれない。左手は崖が更に高くなっている。右手はだんだん崖が低くなって見える範囲ではまだ3mはある。だからその先まで行けば崖がなくなっているかもしれない。---そうして100mほど右手に進んだが、崖こそなくなっていたものの滑落した石や岩だらけの山肌で下りて行けそうにもない。---ここはあきらめてパノラマ道まで戻ることにした。戻るのは上り道になるのでかなりこたえる。小さな峠を一つ越えて、カウベルの音が聞こえてきた時はすごくうれしかった。ハイカーたちの姿も見える。しかし、今は使われていない古いロープウェイの下を越えて更に南にゆくと、谷駅からは遠ざかるばかりだった。しかしともかくパノラマ道には復帰した。やがてスーレイ行きという道案内があったが、それが谷駅方面に行く道がどうかわからず、しかも道が踏み分け跡すらはっきりしていないところなので、見過ごし更に南に進む。だがこれではらちが開かないと思い、あるパーティーの人たちに尋ねた。どうすれば谷駅に行けるのだろうかと。そのグループのリーダーとみえる女性が地図を出してルートを検討してくれた。わたしは観光用の鳥瞰図しか持っていなかったのだ。その人が言うには、さっきやり過ごしたスーレイ行きの道を行くのが一番確実だ。だがこの草原をショートカットして行けるのならそうやってあそこの建物まで行けば後は行けるだろうと。わたしは草地の斜面をショートカットして行くことにしてそのグループと別れた。
  行くと、草地とは言え相当難ものだった。草地とはいえ、その下は崩れ落ちてきた角の立った石や岩だった。石の上には短い芝のような草が生え、石と石の間には背の高い草が生え、その間の空隙がどうなっているのかは見通しようがなかった。短い草の上だけを踏んで行かなければならない。そうやって北へ向かって下って行くと、この先へゆくなとばかりに、杭が打たれ二本のロープが張られていた。ロープの直径は6mm。これなら足を踏み外した時にも身体を支えられる。だが手袋がない。そこで手ぬぐいを出して右手に巻き、それでロープを掴むようにしていった。その冊の先は水が流れ、岩の落差も大きかった。こうして建物近くの太い道まで出た。太い車が通る道だ。
  その太い道を少し下へ辿ると、今度は幅15mほどの土石流の跡と思える土石道が下に続いていた(この土石流の上方、標高2300mあたりのところで先ほどブルドーザー二台が工事をしていたが、その工事の音が止まった。さっきのい岩雪崩のせいだろうか? 谷筋は違うのだが)。そこの土石流跡に乾いた牛のフンらしきものが一つだけ落ちていた。これはとても励ましになった。四つ足が歩けるなら人間も歩ける。こうしてわたしは道を外れ、土石流の跡らしきものの上を歩いていった。約1km程だろうか、掴まる木も草も岩もないので、自分が滑落しないように十分注意しながら下りた。下りた先には人が集まっていて、飲食を提供してくれそうな家が見えた。後で聞いたのだがここがアルプ・シュレイ(Alp Surlej)というところだった。

遠望者
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これもピラミッド岩。
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苔石。
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四足動物。
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岩雪崩。

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この上のところまで引き返す。
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この草地をショートカットして下の道まで下りれるか?
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張られた6mmのロープで身を支えながら下りる。
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土石流の残した道?
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アルプ・シュレイの店。このヌス・クーヘン(Nuss Kuchen)はとても美味しかった。






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